ベースをペンで描いたあとは、3〜4色の色鉛筆で着色
そう言って楽しそうに笑うオオカワさん。体調不良などハラハラするようなことがあっても、育児に奮闘して疲れてしまっても、手帳に描かれた絵日記とコメントは、ユーモアたっぷり。思わずクスッと笑ってしまったり、「そうそう!あるよね!」なんて頷いてしまうようなエピソードが満載です。
「子どもが家族や周りの人たちに愛されて、笑いの多い中で成長していく様子は、私自身が将来とても愛おしい気持ちで読み返すんじゃないかなと思うんです。こうやって戻らない時間を書き残していくこの手帳は、宝物になると思っています」
オオカワさんが育児絵日記を書くのは、いつも寝る前。1日の終わりに「こんなことがあったな」と振り返りながら、手描きで絵日記をつけるときは、リラックスできる時間でもあるそうです。「手帳を書いたらあとは寝るだけ。1日の終わりに描くと、ちゃんとその日をパタンと閉じられる気がして」
ユーモアを忘れない
楽しい子育ての記録
① その日のトピックは、飾りをつけて目立たせてタイトルに。パッと見て内容がわかる
② メインのイラストは細かく描き込まず、ラフな線で3~4色の色鉛筆でシンプルに。背景に星やドットをちりばめるとかわいらしさが増す
③ ひとこと日記。どんなできごともイラストに合わせて明るい文章にすると、書くときも見返すときも、とても楽しい気分になれる
④ “何を、どれくらい食べたか”、離乳食をメモ。新しくチャレンジした食材や好き嫌いも記入
「日記として活用するにあたり、イラストを邪魔しない罫線や主張の強くない日にちフォント、くすみのない色の紙、B6サイズの手帳をずっと探していて、EDiTを見たときに“これしかない!”と思いました。シンプルでおしゃれ、無駄がないページ構成、サイズ感、紙の色、とても理想的です」
インスタグラムで
家族にもシェア
やわらかい色づかいで描かれるオオカワさんの育児絵日記は、インスタグラムにもアップ。ほぼ毎日更新されています。
「インスタグラムにアップすることが、家族への近況報告にもなっているんですよ。子どもの変化に気づいたジイジから“こんなこともできるようになったんだね”と、連絡が来たりするんです(笑)。両親も子どもの成長を楽しみながら見守ってくれています」
思わずクスリと笑いたくなるような視点のコメントが楽しい日々の様子
独立が転機となり
イラストレーターとしてプロデビュー
そんなオオカワさんにとって、絵を描くことは“日常の一部”というくらい、ごく当たり前のもの。しかし、絵を描くことを職業としてきちんと意識し、向き合い始めたのは、「会社を辞めて独立してからだった」と言います。
「グラフィックデザイナーとして会社勤めをしていた頃は、飲食関連や美容関連のポスター、パッケージ制作などが主な仕事。デザインに付随したイラストがあると私が描いたりしていました」
ただ、あくまでそのイラストはデザインの範疇で、オオカワさん自身は「イラストレーターになる!」とは思っていなかったそう。
「その後、フリーランスのグラフィックデザイナーになろうと退社しましたが、ツテもなく、ゼロからの営業。売り込み先でお仕事につながったのが、イラストだったんです」
手描きしたパーツをデータ化することはあるものの、オオカワさんの繊細なイラストはすべてデジタル処理で生まれる
オオカワさんが手がけたデザインの中のイラスト。それがある企業の目に止まり、ミニ漫画を描くなどイラストレーターとして本格的に仕事がスタート。そして同時期にもう一つ、オオカワさんにとって転機となる出会いがありました。それが、雑貨のデザインです。
「100円ショップに商品を卸しているメーカーで、雑貨のデザインとイラストを手がけることになりました。文房具やキッチングッズ、ラッピング用の包装紙などアイテムはさまざまで。最初はデザインがメインだったのですが、いまは“今回はイラストだけ”など、相談しながらやらせていただいています」
ノートや紅茶のパッケージなど、「ドリーミィな女性の心を上品に表現する」というオオカワさんのテーマが生かされた世界観
オリジナルデザインの
アイテム制作にも着手
雑貨デザインの実績から、紅茶や珈琲を販売する別の会社からもパッケージ依頼を受け、ディレクションも任されることになったというオオカワさん。現在はクライアント仕事とは別に、オリジナルデザインのグッズ販売も始めています。
「以前、イラストの個展や展示会でオリジナルグッズをつくったこともありましたが、最近はオンライン販売にも挑戦しています。子ども服などのキッズアイテムも、いろいろつくってみたいですね」
オンラインショップで販売している、オオカワさんのイラストを用いた子ども用オリジナルTシャツ
無感動な日々に危機感
心を動かした子ども
キラキラと目を輝かせながら楽しそうに話すオオカワさんですが、「仕事や日常に中だるみを感じていた時期があった」と話します。
「何に対しても感動しなくなっている自分自身。大人になると感動が薄れていくというか、仕事や環境や日常に慣れきってしまったのか、理由はわかりませんが、感動しない、心が動かない自分に気づいたときに“まずいな”って思ったんです」
そんなタイミングで子どもが生まれ、人間の成長の不思議に感動。無垢でまっすぐな子どもと接しながら、自身の心にも大きな変化が起こったそうです。
「なるほど。こういうふうに全部まっすぐにとらえないといけないんだなと。子どもに日々、心を動かされています(笑)」
自宅のオフィススペースには、オオカワさんお気に入りの自身の作品も(左上)
イラストの著者本で
新しいタッチに挑む
「2016年に編集者から“イラスト練習帳の本を出したい”という相談があり、読者が描きやすいタッチとか意識したことがなかったので迷いました。ですが、初心者でも描きやすいタッチで、簡単なものを生み出す作業に魅力を感じてお引き受けしたんです」
オオカワさんの著者本となったその『毎日楽しい!かわいいイラスト』(宝島社)は、累計発行部数が8万部となりました。これが大きな自信になり、イラストレーターとしてもますます飛躍。「本の挿画もやってみたい」という新たな夢も生まれています。
テーマによって異なるタッチを描き分けるのも得意。左 : 知育絵本『パティシエシールえほん キラキラスイーツ&パン』(講談社)/ 右 : 『毎日楽しい! かわいいイラスト』(宝島社)
「大きな広告もやってみたいですね。以前、駅ビルのクリスマスビジュアルを担当したことがあって、駅のコンコースから6階分のフロア全部にイラストを施したんです。コンペになるんですけど、また挑戦したいですね。今後も描き続けて、腕磨きしないと」
描きたいモチーフやタッチの変化にも果敢に挑み、「自分の分野を広げるために作品を増やしていきたい」と、いきいきと話すオオカワさん。毎晩描く育児絵日記を通じて、子どもの成長も、オオカワさん自身の成長も心から楽しんでいる様子が伝わってきます。これからも新しいことをたくさん吸収しながら伸びやかにご活躍されることでしょう。