EDiT × 日記屋 月日コラボレーション企画
「<人生を編集する>ってなんだろう?」 TaiTan × 内沼晋太郎 トークレポート
マークスの手帳・ノートブランド「EDiT(エディット)」と、下北沢 BONUS TRACKにある日記専門店「日記屋 月日」とでコラボレーションを実施。2024年11月28日(木)には、「人生を編集する」をテーマに下北沢の本屋B&Bにて、ラッパーでクリエイティブディレクターのTaiTanさんと、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんによるトークイベントを開催しました。当日会場は満席で、オンラインでも400人近くの人が視聴するほどの大盛況。普段から仕事を通じ書籍や楽曲、動画コンテンツなど様々な”編集”に携わる二人にとって「人生を編集する」とは。手帳との向き合い方や日常の経験などを踏まえ、それぞれの編集観を語り合いました。
アイデアを拡張する時は紙に書くことが大事
内沼 今日はお越しいただきありがとうございます。
TaiTan なんだかおそれ多いですね。
内沼 いえいえ全然ですよ。いつも通り、リラックスしてお話していただければ。さっそくですけど、日々の予定はどう管理していますか?
TaiTan 紙の手帳は使わず、グーグルカレンダーを使っています。予定以外にもメモを書けるスペースがあるので、ブログ的なものなど、自分の文章はそこで書いています。
内沼 紙の手帳は人生で使ったことはないですか?
TaiTan ありますよ。でも記憶にないということは、あまり馴染みがなかったかもしれません。世代的に、気づいたらグーグルカレンダーがありましたし。高校3年生の頃からi-phoneユーザーなので。
内沼 TaiTanさんとは13歳年の差がありますが、僕は最初、紙の手帳を使っていました。携帯電話を持ったのは大学生になってからですが、当時はまだスケジュールを管理するような機能はついていなくて。だから大学から社会人になった最初の頃は、ずっと紙の手帳を使っていました。TaiTanさんは、手帳以外に紙を使うことはありますか?
TaiTan ノートは使います。企画を考えたりアイデアをまとめる時は、まずノートに書きます。i-phoneでまとめるのは思いついた単語レベルですが、アイデアを拡張していく時は目に見える指針的行為としてノートを使います。紙の手帳を使うことに憧れもありますよ。
内沼 考えごとをまとめる時は紙がいいんですよね。
TaiTan やっぱり頭の中で考えていることが可視化されていかないと、発想が広がりにくいですよね。
手帳にメモした言葉が人生の指針になることも
内沼 ちょっとプライベートに関することをお聞きしますね。めっちゃ忙しいと思うんですけど、普段はどんな生活をしていますか?
TaiTan まず、朝8時に起きて散歩をしています。頭がフレッシュな状態の午前中は、価値を生成するような仕事をして、収録はできるだけ23時とか、夜にやるようにしています。あまり頭を使わなくてもいいということもあって(笑)。
内沼 朝8時に起きて23時にポッドキャストで話すって、けっこうハードですね。疲れないですか?
TaiTan 仕事が好きなので苦に思うことはないですね。
内沼 そういった毎日のスケジュールはグーグルカレンダーで管理している、と。日々のお仕事は動画制作や執筆、曲作りなど多岐に渡りますが、それらをアウトプットする内容は、どう整理しているんですか?
TaiTan あまり深くは考えておらず、自然とできているという感じですね。だから”このアイデアはここで出そう”みたいなことをメモったり書き分けたりして管理しているわけではないです。でも僕みたいな感じでなく、きっちり考えとかを整理する人にとっては、手帳って便利ですよね。スケジュールを管理する以外に、余白部分にメモができるわけじゃないですか。例えばたまたま耳にした名言をメモったり、新年の始まりには目標みたいなものを書き込んだりするなど、自分との約束を書ける。それがすごく面白いと思います。
内沼 ほんとうにそうですね。「人生を編集する」というコンセプトになっている「EDiT(エディット)」はまさにそうで。手帳に書き込むことで自分を鼓舞したり、啓発できるっていう。
TaiTan そうですよね。“手帳”というもの自体が、結構自己啓発的な要素があるところが面白いなと。
内沼 「人生を編集する」に絡めて、TaiTanさんはポッドキャストの「音声の編集」についてもお聞きしたく。編集は自社でやられていると思うんですけど、言いすぎた部分は切ったりしているんですか?
TaiTan 結構切ってます。ただ、自分で言ったからには切りたくない箇所もあるんですけど、知り合いが絡んでいたりすると多いに悩みます(笑)。
内沼 編集にはどのくらいの時間がかかるのですか?
TaiTan 収録をしながら頭の中で編集はしていて。例えば周啓(ポッドキャスト番組『奇奇怪怪』で共演している玉置周啓さん)が収録中に頑張って話してくれていても、「これはカットするのになあ」って思いながら収録をしたり。そういう時の編集作業は事前にわかっているので、めちゃくちゃ早いです(笑)。
一億総編集者時代のいま、「人生を編集する」行為はあたりまえ
内沼 最近はポッドキャスト界隈の人たちによって世論ができるなど、「ポッドキャストの時代がやってきた」と言われています。そういったことを踏まえて、トップランナーであるTaiTanさんに、ポッドキャスト業界の話をうかがいたく。
TaiTan 個人の「ポッドキャストの編集」という意味では、仲間と一緒にポッドキャストのレーベルを作りたいと思っています。ポッドキャストを一つのブランドとして考えたときに、世に出すものすべてに意識をすることは大事なので、そういう部分のサポート。またリスナー大感謝祭みたいな感じではない、新たなフェーズのイベントとか、そういうものを考えています。そうする方が単純に業界の力になれると思うんです。まあでも途中で面倒くさくなっちゃうかもしれませんが。あれ、なんか話が脱線してますかね(笑)?
内沼 大丈夫です。「人生を編集する」というのが今回のテーマですから。TaiTanさんの人生の中でポッドキャストの編集作業は、かなり大きな編集だと思います。
内沼 ここからは、TaiTanさんが、今後の人生をどう編集していくかというお話をお聞きしたいです。以前、TaiTanさんがお話をされていた中で「自分はどこにもいないんだ」的なことが印象に残っていまして。それは、どこにでも属しているように見えて、どこにも属していないっていう。そういう動きを意図的にされているのかなって。
TaiTan そうですね。学生の頃からいろんなものに興味ありすぎて、単一の何者かでいるという状態にほぼ関心がなくて。大学生の時に複数の肩書きを持っている「スラッシャー」と呼ばれる人が台頭してきて、彼らは変な見られ方をされましたが、俺からすれば、その単一の何かであるほうが不自然。
内沼 これからもそうありたいと。
TaiTan はい。確定していることなんて何もないわけですから。今回は「人生を編集する」というテーマですが、そもそもいま、編集者っているんですかね。
内沼 もちろん出版社には書籍や雑誌の編集者はいますが、実質的にはYouTubeのプロデューサーみたいな人が、昔の雑誌の編集者の役割を担っている感じですかね。自分が演者になるなど、編集者が出る側の人間になってきている。自分を編集するという意味では、そういう人の方が時勢に合っているように感じます。
TaiTan たしかに。あと広い意味で言うと、テキスト文化の分岐路にあるんだと思います。アウトプットをする際、テキストのコミュニケーションである必要性が無くなってきている。それどころかハンデになっている。
内沼 そうですね。いまは一億総編集者時代といいますか、みんなSNSで自分の写真や動画を編集して発信できちゃうのもあるんでしょうね。だから今回の「人生を編集する」っていうテーマは時代に合っていますよね。マークスさんから発売された手帳「EDiT(エディット)」を、よいしょするわけじゃないですけど(笑)。
プロフィール
TaiTan
Dos Monosのラッパー。クリエイティブディレクターとしても活動し、¥0の雑誌『magazineⅱ』やテレ東停波帯ジャック番組『蓋』、音を出さなければ全商品盗めるショップ『盗』などを手がける。Podcast『奇奇怪怪』やTBSラジオ『脳盗』ではパーソナリティもつとめる。
内沼晋太郎
1980年生まれ。ブック・コーディネーター。株式会社NUMABOOKS代表取締役、株式会社バリューブックス取締役。新刊書店「本屋B&B」共同経営者、「日記屋 月日」店主として、本にかかわる様々な仕事に従事。また、東京・下北沢のまちづくり会社、株式会社散歩社の代表取締役もつとめる。著書に『これからの本屋読本』(NHK出版)『本の逆襲』(朝日出版社)などがある。現在、東京・下北沢と長野・御代田の二拠点生活。
奇奇怪怪:ラッパーTaiTanと音楽家 玉置周啓とによるPodcast番組